相続コラム
2025/04/21 相談事例
自筆証書遺言 日付がないと思ったら…
佐藤さん(仮名)のお父様が亡くなり、その相続手続きのご相談にお越しになりました。
佐藤さんには兄がいますが、父と兄は数十年前から不仲になり、ほとんど会話もすることがなかったとのことです。
その影響もあり、冠婚葬祭の行事などにもお兄さんは顔を出すことがなく、佐藤さんは兄とは不仲でないにもかかわらず、ここ十何年会ったこともないということでした。
お兄さんはもちろんお父様の葬儀にも出席していません。
遺産は、不動産と預貯金がありましたので相続手続のために連絡を入れたところ、「俺は関係ない好きにしろ」と話の土俵に乗ってくれません。
しかしそんな中、お父様の自筆証書遺言が発見されました。
息子との状態を案じたお父様は、佐藤さんが遺産を相続できるようしっかり遺言書を遺してくれていたのです。
検認も済ませ(もちろん兄は検認に来ませんでしたが)、その遺言書を持って当センターに相談に来られました。
私は、その遺言書の中身を見た時、「あれっ」と思いました。
なんと日付が書かれていないのです。
日付のない遺言は無効だという意識がありましたので、多少焦りながら封筒に目をやると、封筒の裏には日付が書かれていました。
そしてしっかり封印してあった形跡も見られました。
私は急いで判例を調べてみることにしました。
せっかくのお父様の御厚意がどうなってしまうのか緊張しながら調べを進めていくと、同様の事例で、『遺言本文には日付がなく、封筒に日付があり、封筒が遺言書の一部とみられる限り適式の日付の記載といえる』、という判例(福岡高判昭和27年2月27日)がありました。
また一方で、日付のない遺言書が、開封された日付のある封筒に収められていたものは日付を欠く無効の遺言書とした事例(岐阜家審昭和55年2月14日)もありました。
先日登記申請を行い、相続登記が無事完了しました。 (477)